Amazonに立ち向かうための3つの戦略/『アマゾンと物流大戦争』

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Amazonという企業が持つ強みとは何なのだろうか。安さ、迅速丁寧な配送、品揃え、さまざまな会員特典。あげようと思えばいくらでも思い浮かぶけれども、どれも決定的な理由では無いような気もしてしまう。Amazonというのはあれだけ目立っていながら実は謎が多い企業で、その全貌を掴むことはかなり難しい。

今回紹介する『アマゾンと物流大戦争』の中では、Amazonの躍進の中心にあるのはロジスティクス(物流を合理化する手段)だと断言されている。そうした上でAmazonの脅威に晒されている他企業はどのような戦略で立ち向かっていけばいいのかを、物流コンサルタントである著者が豊富な実例とともにレポートしていく。物流というモノがいかに大切で、かつ難しいか。またAmazonという企業がなんとまあ恐ろしいか。それを窺い知れる一冊。

Amazon最大の強みは「ロジスティクス」

Amazonがここまでの成長を遂げた要因はロジスティクスにある、というのが本書の中心テーマだ。ロジスティクスとは、ひとことで言うなら物流を合理化するための手段と言える。記事冒頭で言った安さや配送スピードも、元をたどれば全てこの高度なロジスティクスがあればこそ実現できるモノなのである。

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Amazonは長年で培ってきたロジスティクスによって徹底的な低コスト化を実現する。そしてそれによって得た利益のほとんどを物流ネットワークの強化や商品の低価格化といった投資に回す。そうすることでまた来客数が増えて物流は効率化し、コストは下がっていく……。そうしてまた最初に戻って同じことが繰り返されるわけだ。このサイクルがAmazonが持つ最大の武器なのだという。

「だったら他企業もこの循環を真似すればいいじゃないか」と思うけれど、ロジスティクスというのはそうはいかないらしい。その理由としては参入障壁が非常に高いことがあげられる。物流というものは、例えAmazonのような巨大な物流センターを持っていても、それを管理するためのソフトウェア、ノウハウを熟知している人材がいなければ成り立たない。そのようにある要素を高度・大規模にしてしまうと他の部分も比例して高いレベルが求められることになってしまうので、方法を知れたからといって簡単には真似できない。本書の中では初期段階で物流センターに投資をするあまり、結局はコストがかさみ破綻した企業の失敗例をいくつか見ることができる。

Amazonのやり方はその点でも参考になる。「顧客第一主義」を謳って利益のほとんどを低コスト化に回すAmazonでも、新たな事業に乗り出すときはそのノウハウが蓄積されるまでは無理はしないようだ。ロジスティクスに関してもそうで、まずは小規模で試行を重ね、ある程度まで採算が取れるようになってから一気に手を広げていった。そのように堅実に積み重ねてきたのが今日のAmazonの高度なロジスティクスであり、他社がそう簡単に真似することはできないのだろう。

Amazonに立ち向かうための3つの戦略

ではAmazonの牙城を崩すにはどのような戦略が必要なのだろうか。本書では3つの戦略に可能性があることを示している。

ひとつは「ラストワンマイル」の構築。聞き慣れない言葉だったが、「物流センターからお客の家まで商品を運ぶ『配送』の最後の区間」と解説されている。この区間が最も顧客の満足度に関わる部分であり、差別化をはかることが可能となれば高い効果をあげられるのだという。ヨドバシカメラがその代表例として紹介されている。送料無料はもちろん、最短6時間以内に当日配送が可能な「エクスプレスメール便」などもあり、顧客満足度指数では3年連続で1位。これはヨドバシカメラがAmazonと同様にロジスティクスに長年投資を続けており、特にラストワンマイルを重視しているから得られている結果なのだという。

あらゆるサービスが無料なのはスゴイ。

あらゆるサービスが無料なのはスゴイ。

別の戦略として「独自商品を持つこと」があげられている。Amazonは今後もロジスティクスに投資を続けていくのであれば、低価格という面では太刀打ちできない。提携した企業とオリジナルの商品を共同開発したり、プライベートブランドを持つなど、そこでしか得られない価値を用意することは差別化において重要となる。

最後が「ネット×店舗」だ。つまりネットと実際の店舗の相乗効果を狙う戦略である。例えば本書では実店舗では商品を売らず、その価値を伝えたり、顧客とふれあうための場所として利用している企業が紹介されている。そこで気に入った商品があれば、ネットから注文するという仕組みだ。店舗に在庫を置かないので、顧客と密接な関係を築くことに注力しやすいというメリットがある。

個人的におもしろいのはやはり3番目の「ネット×店舗」という試みだと思う。Amazonは既に実店舗である「Amazon Books」の展開を公言しているが、日本においてはまだ先の話になりそうだ。つまり現状ではAmazonの脅威を掻い潜りやすい戦略と考えられる。特に苦戦にあえいでいる書店などは、この方法との親和性が高そうだ。書店は単に「本を売る」のではなく「空間を提供する」ことを考えたほうがいいのかもしれない。先の例でもあったように、注文をネットに委ねることで店舗では人とのふれあいが増える。読書好きの人や知識の豊富な店員と本について語らい、おもしろそうな本があればネット注文する。そんな形の書店もアリだし、生き残る上ではそういった姿に変わることも必要なのかもしれない。

おわりに

本書は、「物流」という分野に関して大学でチョロっと学んだだけの自分でも非常にわかりやすく読めた。用語については著者がその都度で解説をしてくれているので、誰にでも読みやすい本となっている。何より謎多きAmazonについて、現場からナマのリポートを聞いているかのような感覚がおもしろい。

絶望的な脅威に見えるAmazonも、本書を読んだあとでは付け入る隙がまだあるのではないかと思わせられます。特に書店は生き残るための策を見つけてほしいと願うばかりです。本屋ブラつくの好きなので。

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