多読をしたいなら、まず読書を楽しむ方法を知ること 『多読術』

松岡正剛という人を知ったのは、本に書き込みをする読書術を調べていた時のこと。行き着いた動画の中では凄く威厳のありそうな人が丁寧にマーキングの方法を解説してくれていて、動画の内容よりも「この人は誰なんだ!?」と、むしろ人物に興味が行ってしまったのをよく覚えています。しかも調べてみたら大変な読書家ということらしい。

そんな個人的には気になっていた松岡正剛さんの著書『多読術』を読んでみました。特に印象に残ったのは「楽しく読書をする方法」について書かれた部分なので、そのあたりを中心に感想をば。

読書は衣食住のようなカジュアルなもの

本書を読んでいて最も印象深かったのは、松岡正剛さんの読書に対する「いい意味での緩さ」。方法論的な本はだいたいが「こうやれああやれ」といった強制するような物言いが多い中、著者の推奨する読書法は実に自由。

本書の中では、読書というものが繰り返しファッションや食事に例えられている。ファッションと食事の共通項として、その時の気分や場所などの要因によって自由に決めることが多い。みんな自分のやりたいように行っている。

一方で読書というと、なんとなくそれを崇高なものと思い込んでしまっているような人が多い。読書だって、もっと自分の好みでカスタマイズするような部分を大いに持つべき。そうすれば自然と読書は楽しくなるし、多くの本が読みたくなる。そんなお話が書かれているのがこの本です。

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例えば正剛さんは明治の小説を読むときは渋茶と塩せんべいを用意したり、科学書の時は決まって大きな机で読んだりしているらしい。そんな風に読書方法を自分の好きなようにカスタマイズすることが読書の楽しみを膨らませ、引いては生活の一部に溶け込ませることに繋がっていくわけですね。

多読を小手先の技術によって行うのではなく、心から沸き上がる「本を読みたい!」という気持ちによって実践するべきという主張は、いかにも読書好きである著者らしいと感じます。

本をノートにする

冒頭でも少し触れましたが、著者は本への書き込みを推奨している人です。僕も本への書き込みをガンガンやるタイプなので、それについて書かれた部分は興味深く読ませてもらいました。

著者は本に書き込みをするするメリットとして、

  • 読みに徹することができる
  • 再読するときにやたらスピードが上がる

と述べています。これは全くもってその通りなんです。

ペンを持ちながら本を読むと向き合い方が真剣になるので、集中力を上げて読書をすることができます。「大切な部分を見つけよう」という意識がいいんでしょうね。

また再読時は最低限線を引いた部分だけを読めばいいので、内容を振り返る時などは重宝します。こういった感想記事を書くときなども、線が引いてあると無いとでは効率が違います。

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「本をノートとみなす」という一文があるのですが、これも自分が思っていた感覚なので少し嬉しくなりました。気になったりした部分はメモ帳などに書くのではなく、本に書いてしまえばいいわけです。そうやって本を自分好みに編集していくことで、自分だけの最高の一冊に仕上げていくわけですね。

これも先ほどと同様に「カスタマイズするから楽しい」という部分に共通します。実際、本に書き込みをするのは楽しいですよ。おすすめです。

娯楽も休憩も読書で行う

本を読み続ける「活字中毒」になるコツとして、読書の休憩や気分転換も読書で行うという方法が書かれています。

例えば小難しい哲学書を読んでいたら、青春小説を読んでみる。それに飽きたら今度は歴史書などを読んでみる――そうやって別ジャンルの本を繰り返し読むことで、読書をしながらリフレッシュしていくという少し忙しない方法です。

また著者はこういった読み方を続けていると、「こういう時は何を読めば気分転換になるか」ということがわかるようになると述べています。僕は本に疲れるとすぐにネットサーフィンに逃げるタイプなのでこの感覚はわかりませんが、例えば「ビジネス書を読んでいて疲れたら、小説を読めば回復できる」というようなパターンが身についてくるのかもしれません。

自由で優しい読書術

読書の楽しみを知れば、自然と本はたくさん読めます。

これは裏表紙に書いてある言葉ですが、まさに「読書を楽しむ方法」を学べる内容となっているのがこの本です。あらゆる読書方法を許容しつつも、かと言って枠にはめることも良しとしない。そんな著者の読書に対する考えは、非常に自由であり優しくもあり、膨大な読書経験から来る深みを感じさせます。

「読書を楽しむ」という原点に立ち返ることのできる一冊です。

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