他人の意見に流されないための『本質を見抜く考え方』

著者である中西輝政さんは国際政治学者として多くの政治家に助言を行ってきた方です。今回紹介する『本質を見抜く考え方』はそんな著者が正しい判断を行うために実践している思考方法をまとめた本となっています。

一見もっともらしく思える他人の判断や見解に惑わされることなく、「自分の頭で考える」ためにはどうしたらいいか。国際政治学者として、また歴代内閣ブレーンとして、つねに新しい情報を集め、検証し、独自の見解を導き出さねばならない立場の著者が初めて明かした、世の中の真実に迫るための53の実践的思考法。

物事を一方ではなく、あらゆる方向から徹底的に見ようとする著者の実践的な思考方法が非常に印象的な一冊でした。その中から「他人に意見に流されない考え方」に的を絞って紹介したいと思います。

ほどよく批判的になる

なんでもかんでもを批判して喚き散らす人は考えものですが、だからと言って全てを鵜呑みにしてしまうような人にも問題があります。他人の意見に従うのは頭を使わなくていいので確かに楽ですが、同時に危うさもあるわけです。そんなことを繰り返していると、いつしか自分で物事を判断することに極度の恐怖を覚えるようになってしまいます。

特にネットであらゆる情報を自分で調べられるようになってから、僕達の批判的な思考は弱まっているように感じます。口コミの評価をそのまま信じたり、多数派の意見に乗っかって少数派を叩いたり……。早く結論を出したいばかりに、根拠もない安易な情報に飛びついて過ちを犯すことは頻繁に起こっています。

著者はほどよく物事を批判することを「よき異端」と表現しています。全てに対して否定を行うわけではなく、あくまでも物事の真実を見極めるために敢えて異端的に見てみる。これが本質を見抜くためには必要というわけですね。

このように見てくると、いまの日本には、何も知らずに「あてがい扶持」で情報を受け取ってしまっている人が、危ういほど多いように思います。何ものにもとらわれない考え方はまさに、主流でない寄り道、それも世をすねた「異端」ではなく、前向きな「よき異端」の道をあえて歩くことによって得られる面が多いことを覚えておいてほしいのです。

思考は言葉にしなければいけない

頭の中に思い描いていることでも、言葉として表現しようとすると上手くいかないことは多いです。僕はブログ記事を書いている時に特にこれを実感します。「書きたいことはあるはずなのに、なぜか書けない」という状態ですね。ただそういう状態は本当の意味の「考える」という域に達することができていないのだと思います。

思考というものは頭の中にある時点では実はあまり意味を持ちません。それを話すなり書くなりして言葉にすることで内容が整理されハッキリとした形になります。そこまで行って初めて「自分の考えを持つ」と言えるのです。頭の中に留めているあやふやな状態では思考も影響を受けやすく、他人の意見などに簡単に流されてしまいます。「言語化する」というのは考えを明確にするには最適な方法です。

あれこれ思案して、自分の考えにどんぴしゃりという言葉を見つけようとすること。それこそが考える作業であるといえます。どんな「すばらしい考え」も「調査結果」も「研究の成果」も、すべては「言葉」という出口を通らなければならないのです。

思考の基盤を固める

著者の考え方のヒントが53個も紹介されているのが本書の特徴ですが、最後の章のタイトルが『「日本人」を明確に意識する』となっているのが印象的です。これを最後に持ってくるということは著者の強いメッセージがここにあるのではないでしょうか。

おそらく著者が最も言いたいのは「まず自分という基盤を確固たるものにして物事を考えよう」ということなのだと思います。外国を無条件に良いモノだと思わず、まず日本人としての価値観で正しく物事を判断することが大切であり、それが外部に流されず、本質を捉える上では最も重要になるのです。

自分の根っこの部分にあるアイデンティティをしっかり認識し、誇りを取り戻し、そのうえで、いろいろな国の国民性に興味を持ち、お互いに尊重していくことが大切です。  そういう基盤の上に立ってものごとと、この世界を考えていくことが、ブレない「考え方の座標軸」を身につけ、ものごとの本質を見抜く考え方を養ううえで一番大切なことだと思います。

国際政治学者らしい著者の考え方ですが、普段の僕達にも通ずるものがあるようにも思えます。何を考えるにも、それを行うのは結局は自分自身です。それならば自分の根本にある思想や価値観が固まっていないと薄っぺらい考え方しかできません。他人に流されず、自分の頭で考えるためにはそういった基礎的な部分をまずガッチリ固定させないといけないのでしょう。

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