マグマのような熱意のこもった文章。素晴らしいと思います。
しかし単に文章に熱をこめるだけでは、相手に感動を与えるどころか、むしろ逆効果になってしまうこともあるのです。
熱い文章で、読者は冷める
昨日読み終わったばかりの『「読ませる」ための文章センスが身につく本』に、心に刺さる箇所がありました。
不思議なもので、書き手が興奮すればするほど、読む側は醒めるものです。 修飾語というのは、言葉の化粧みたいなものです。 適度に使えば、文章を引き立てるものの、使いすぎると「うわあ……」「必死だな」という感じになる。ビジネス文書の場合は、ほとんど使わないくらいのほうが、精悍な印象になってちょうどいいのではないでしょうか。 押しつけがましいより素っ気ないくらいのほうが、魅力的に映るのです。
これは全くもってその通りだなあ、と。
僕の今までの経験でも、友人などから猛プッシュされた漫画や映画をその後に見たということは、ほぼ無いと記憶しています。何故かと言うとやっぱり「引く」からなのです。自分が何も知らない冷静な状態なのに、相手だけ熱がこもりまくっていたら、抵抗感が生まれるのは当たり前ではないでしょうか。
文章を書く側と読む側もまさに同じような関係性です。書き手は基本的に「何かを伝えようとする」ことが目的なので、無意識のうちに文章がエキサイトしてしまいがちです。
反対に、読み手が文章に触れる時というのは冷静であることがほとんどです。そこで触ると火傷しそうな文章が立ちふさがっていたらどうでしょう? きっと読者は逃げだしてしまいます。
熱い文章は「保身」でしかない
僕たちは何かを伝えたいと思う時に、つい必要以上に大げさに言ったり、くどくど説明してしまうように思います。しかしそれは説得力が増すどころか、むしろ読み手をイライラさせてしまいます。
余談ですが、「天」という麻雀漫画をご存知でしょうか。「カイジ」や「アカギ」などを書いた福本伸行先生の漫画なのですが、その中にこのようなセリフがあります。
あまりにさりげないと不安になるんや つい… 伝えよう伝えようとしてしまう……
結果… やり過ぎて逆効果… 墓穴を掘る…!
場面的には麻雀の対局中なので、文章の話には全く関係ないのですが、この心理はまさに今回言いたいことを端的に表していると思います。
つまり「伝わるかどうか不安だから、変に盛り上げた文章を書く」というのは、伝えたいというよりはただの保身であり、一方的な押し付けです。それで読者の心を動かすことができるかは言うまでもないでしょう。
ここぞという場所でだけ文章を盛り上げる
無理して大げさな文章を書くぐらいなら、淡々とした文章を書くほうがマシということがおわかりいただけたと思います。しかし淡々としているだけだと、それはそれで情緒に欠けるので面白みがありません。
そこで、記事の中で要点となる部分は思い切り盛り上げて、それ以外は抑えるという手法が効果的です。抑揚が生まれ、読ませる文章作りに繋がります。
また方法としては最後に盛り上がりどころを作るのが効果的です。言わばクライマックス作りですね。
文章の盛り上がり方は、多少の小さな波はあれど、おおむねだんだん上がっていくのが理想です。だから、序盤や中盤で盛り上げてしまうと、後半はさらに盛り上げなくてはならなくて、苦しくなってしまう。
またテクニックだけにこだわるのも問題だと思います。読み手を感動させるような熱い文章を書きたいなら、「内容で勝負する」ほうが効果も高いと思いますね。小手先のテクニックで心を動かせるほど人間は甘くないでしょう。
今回引用した『「読ませる」ための文章センスが身につく本』は、内容はわかりやすく、しかも実践的であるので勉強になる部分が多かったです。他にも感銘を受ける部分はたくさんあったので、別の機会で取り上げようと思います。
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