本を教養を得るツールにするための『本の「使い方」』

IMG_0357

「本から学ぶ」などとは言わずに「本を使う」という積極的なタイトルに惹かれて読んでみました。

「活字中毒」を自称する出口治明さん(ライフネット生命保険会長兼CEO)が、「本から教養を学ぶ必要性」や「どうして本が優れているのか」などの考えを語ってくれています。なんかもう伝わってくる”本大好き感”が凄い。

著者を見習って、本に対する向き合い方を見つめ直したくなるような本です。特に古典が読みたくなった。

なぜ教養を学ぶことが必要なのか

思うに、「教養」という言葉を頻繁に使ってはいるものの、自分自身それがどういうものなのかを具体的には理解できていないように思います。知識の幅が広いことなのか、それとも知識の奥行きが深いことなのか。それとも知識ではなく、人間性の部分を言っているのか。どれも正しいようで、どれもピンとこないような。

そんな自分にとってフワッフワしている教養の定義。それが本書の中では、教養とは「日々の生活の判断材料である」と定義づけられています。

たとえば、気になる異性に「つき合ってください」と言うのか、言わないのか。おもしろそうな仕事があったときに「自分でやらせてください」と言うのか、言わないのか。日々、自分の頭で考えて次々と選択(対応)をしていくのが、人間の人生です。

人間が、この社会でより良い生活を送るためには、この日々の選択を少しでも正しいものにするために、自助努力(勉強)が必要です。日々の選択の判断材料となるのが、「教養」です。(P25)

僕たちは教育によって必要最低限の知識は与えられていますが、それだけでは人間の営みとしては不十分です。その知識をベースにしながら、さらに教養を用いて様々な判断をしていくことが楽しい人生を送っていくことに繋がるというわけですね。

ではこの教養を学ぶにはどうすればいいか。教養を得る方法はひとつではありませんが、その中でも本は最適なツールであると著者は言います。

本が優れている理由

様々な情報ツールが存在する中で、どうして本が優れているのか。本書では5つの理由があげられています。

➀何百年も読みつがれたもの(古典)は当たりはずれが少ない

間違った情報が流通していることも多い中、本はそういった誤情報に踊らされる危険性が少ないです。特に時代を超えて読みつがれてきた古典であれば、そこには普遍的な何かが必ずあると考えることができます。

僕も昔は読む本に迷った時は、まず世界史の資料集に載っている文学などを読むようにしていました。「世界の歴史から見ても有名な本なのだから、読んで損はないだろう」と考えていたわけですね。そういったことをしていた人間なので、これは共感できる理由です。

➁コストと時間がかからない

当然ながら、本も購入時にコストはかかります。それでも誰かと会うために遠出したりすることに比べれば、かなりの低コストということですね。

➂場所を選ばず、どこでも情報が手に入る

これは僕も思う本の素晴らしいところですが、本は読もうと思えば24時間、場所を選ばずに読むことができます。電車の中でも、お風呂の中でも、横になりながらでも情報を得られるツールというのは、他にそうはあるものじゃありません。

book-933088_640-min

また最近だと電子書籍の存在が、さらにこのメリットを強めてくれていると思います。電子書籍なら、深夜だろうが時間が無い時だろうが、ワンクリックで本を購入して、すぐに読み始めることができるわけです。Kindle万歳。

➃時間軸と空間軸が圧倒的に広くて深い

古代ローマ皇帝の話を実際に聞くことはできませんが、彼が書いた本なら読むことができます。宇宙へ行ったことはなくても、宇宙へ行った人の本を読めばその神秘に触れることができます。

本はそのようにして、時間や場所を飛び越えて知識を得られるのが素晴らしいということです。

➄実体験にも勝るイメージが得られる

これは旅行好きでもある著者らしい理由かもしれません。本は写真やイラストが無い限りは読み手のイメージで情景を想像しますが、時々そのイメージが現実を超えるような印象を残すことがあるのだとか。

本当に優れた映画や文学は、体験をゆうに凌駕する力があると思います。

本にはこれだけの利点があるわけですが、もちろん全ての知識を本から得るべきというわけではありません。偏りが生まれるので、人から学んだり、歴史や場所から学ぶことも当然必要になります。

また先ほども言ったように、教養はあくまで「判断材料」となるものです。それを使用するに至らなければ、ただの持ち腐れになってしまいます。使う機会に恵まれるように、積極的に外部と関わっていくことも必要なのでしょう。

著者の本の読み方から学ぶ

ここまでは教養や本をテーマに色々と書いてきましたが、実は自分がこの本でもっとも感銘を受けたのは、出口さんの本に対する姿勢や哲学といったものだったりします。

まず出口さんは「本は人だ」という気持ちで、読書するときは著者と対話するような気持ちで読みます。だから速読などはしないし、線を引いたり付箋を引いたりもしない。頭から至極丁寧に読む。まさに本と真剣に向き合っているわけです。

book-923254_640

全てが自分と真逆で、頭をガーンと殴られたような気分。自分は普通に本に書き込む人間だし、速読とは言わないまでも読み飛ばしなどは普通にしてしまう。

もちろん出口さん自身も「どのような本の読み方をしても人それぞれでいい」ということを言っているので、どれが絶対的に良くて悪くてという話でもありません。ただ読書術に関する本では「速読」をプッシュする物が多く、自分も漠然と「速読でいいんだ」と思っていました。

そんな自分にとって、出口さんの読書に対する哲学から得られるものは多い。本に対してそういう考えを持っている人がいる、ということが非常にプラスになりました。

本を楽しもう

「なぜ本を読むのか」「なにを読んだらいいのか」「どうやって本を読むのか」といった内容がまとめられている本ですが、根底には「本は楽しむもの」という著者の考えがあります。

本は、「読まなければいけないもの」ではありません。義務感で読む本ほど、つまらないものはないからです。本は、楽しむためにあります。だから、「自分が興味を持てる本」から手にとってみてください。

文の節々から出口さんの本が大好きという気持ちがバシバシ伝わってきて、自分もそれにあてられてしまった感じです。静かに小説が読みたいような気分になってきます。文章術の本を読むとブログが書きたくなるように、これを読んだ後は本が読みたくなるような一冊と言えます。

また著者の膨大な読書量からくる経験則がたっぷり詰まった本なので、読書方法に迷いがある人や、本から効率的に学びたいという人の参考にもなる本ですよ。

SNSでもご購読できます。