どのようにテロと「付き合う」か/『テロリストは日本の「何」を見ているのか』

日本人からするとISのテロ攻撃というのは対岸の火事のように受け止めがちだけれど、もはやそうも言っていられない状況にある。アメリカと原発を国内に抱えている日本はISの格好の的となり得るからだ。そういった意味で危機的とも言っていい状況に、日本はどのように振る舞っていくべきなのか。そのひとつの方向性を示しているのが本書である。著者の伊勢崎賢治さんはNGOや国際連合の職員として紛争地の武装解除を行ってきたという方。

日本はテロの格好の的

日本はなぜISの標的となり得るのだろうか。ひとつは国内にアメリカ軍が駐留していることがある。著者は「テロリズムは大義上の敵を必要としている」と述べる。敵を作れば自分たちの正当性を民衆に訴えることが可能となるからだ。そういった時に超大国アメリカはまさに絶好の標的だが、世界一位の軍事力を持つアメリカに攻撃なんて簡単なことではない。そういった時にちょうどいいターゲットとなるのが日本というわけだ。日本はアメリカを体内に抱えており、また安保法の成立も新しい。アメリカに代わる攻撃の的としてはうってつけなのである。

大義上の敵への攻撃が思ったような成果を挙げられない時、どうするか。それと同じ大義上の正当性が示せる新しい敵、それも、よりソフトなターゲットを見つけようとするのは理の当然です。そういうソフトターゲットに、うまく当てはまるのが日本なのです。

また国防上の脆弱性も抱えている。3・11において、電源の喪失だけで原発を破壊できることがテロリストたちにも明らかになってしまったからだ。日本はISから見た時に十分に攻撃する理由があり、また実際に攻撃されたときにも原発という弱点を抱えているので与し易い国なのである。

日本はどのようにテロリズムと「付き合っていくか」

印象的なのは、著者はテロリズムは排除するべきではなく「付き合っていくべき」と述べていることだ。ここまでテロリズムが蔓延っている現代では、もはや殲滅という考えでは太刀打ちができない。それは無関係の民衆すら傷つけることに繋がり、憎しみが憎しみを呼ぶことになってしまう。世界はテロリストたちと向き合わざるを得ないのである。

殲滅しようという発想で立ち向かっていけば、もともと民衆のなかに深く浸透している「敵」だけを選別することはできませんから、当然、民衆も傷つく。すると、傷ついた民衆の怒りは我々のほうに向かい、「敵」を増やす結果となって、報復の連鎖が続くだけなのです。殲滅ではなく、いかに“付き合ってゆくか”を考えるしかないのです。

ではそういった考えに立ったとき、まず日本は何ができるのだろうか。まず核セキュリティを強化することが肝要と著者は言う。日本は原発を稼働させるか否かという議論は活発にされるが、肝心のセキュリティ上の問題について深く言及されることは少ない。稼働するにせよ、しないにせよ、テロの脅威を第一に考える必要があるということだ。

それとは別に「日米地位協定」と「9条」の問題点も指摘している。アメリカと地位協定を結んでいる国は世界中にあるが、そのなかでも日本はかなり不利な内容をアメリカと取り交わしている。極端なことを言えば、アメリカの行動によってテロリストたちの反日感情を煽ることにもなってしまう。また9条下では日本の自衛隊は交戦主体と見なされていないが、現実としては世界4位の軍事力を誇る軍隊であり、さらにISの活動エリア近辺にまで行ける状態となっている。ISからすればたまったもんじゃないだろう。

グローバルテロリズムの震源地近くでの軍事力の見せびらかしは、即、日本の国防の脅威として跳ね返ってくるからです。

憲法を改正するかどうか、という話は難しいが、世界が大きく動いているなかで日本も変化することを強く求められている時期なのかもしれない。

おわりに

自分は国際情勢とか紛争について無知と言っていいレベルだったけれど、本書はISやそれを取りまく国家、また日本が置かれている状況を根本から詳細に書かれているので、わかりやすく読むことができた。テロが蔓延る今だからこそ、世界を、そして自分たちの住む日本を知るために読んでおいて損はない本かと思います。


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