読み手に正確に伝えるために──『きっちり! 恥ずかしくない! 文章が書ける』

先日の半額セールの対象となっていたので即購入した本。

本書の目的は単純明快。文の構造を正確に理解し、正しく助詞を使い、正しい日本語を使って文章を書くこと。どこか変な、違和感のある文には、文法的な欠陥、間違った言葉の使い方があるものです。

たとえば、次のような文章はいかがでしょうか。

「このバッターは選球眼がいいので三振とフォアボールをよく選び、打率と本塁打が多いバッターだ。」 (詳細は本書16ページ以降で)

ベテラン校閲記者が「読み手に正確に伝わる文章の書き方」をわかりやすく解説。「書くことにいまいち自信がない」という人も楽しく学べます。

同著者の本に『しっかり! まとまった! 文章を書く』がある。今回取り上げる本はその前編にあたる本となっている。「てにおは」の使い方、読点の打ち方など、文章術というよりは文法をしっかり学べる本という印象を受けた。その中から文章を書くということにおいて、個人的に参考になった部分をまとめていきたいと思う。

読み手に伝えるには「感情」ではなく「状況」を書く

文章というのは話すことに比べると感情の共有がしづらい。それゆえに、書き手が「なぜそう思ったのか」という理由の部分を具体的に書くことが求められる。そうでないと読み手に自分の感情がストレートに伝わらないからだ。

例えば本書の中ではこのような例文をあげている。

きょうは、朝から気分がいいので、庭に出て花の水やりをした。

悪文とは言わないまでも、この文章は具体性に欠けている。特に「気分がいい」というのは読み手からするとなぜ気分がいいのかがわからないので、いまいち文章に入り込めない。

ではどうすればいいのかと言うと、書き手が「気分がいい」という感情に至った理由の部分を描写すればいいわけである。改善された文章は以下のようになった。

「もう朝ですよ」。カーテン越しに差し込む春の日差しが、私のまぶたを優しくノックする。窓越しに見える庭の草花も風にそよぎ「こっちにおいで」と、手を振っているようだ。私はベッドの中で一回、大きく伸びをした。そしてパジャマのまま庭に出て、花に水やりをした。「おはよう」のあいさつ代わりだ。

まさかこの文章を読んで「書き手の寝覚めは最悪だったに違いない」と思う人はいないと思う。つまりは直接的な「気分がいい」という言葉よりも、その状況を詳しく書くほうが書き手の感情をより雄弁に語ってくれるのである。

もちろん常に「気分がいい」「面白い」「嬉しい」といった直接的な表現を使ってはいけない、ということでは無いと思う。ただ使うにしても、読み手にもそう思ってもらえるような「状況」をしっかりと書き添えなければいけないのだろう。

過去の文章に「現在形」を混ぜる効果

英語の授業では嫌になるほど「時制の一致」というものを意識させられた。もちろん日本語でも過去の出来事は「〜だった」というように過去形を使うことは誤解を招かないためにも大切だ。しかし文章表現という点ではそれに従わない方が読み手に状況が伝わりやすいということもある。

例えば本書内の以下の例文。

紅葉の奥入瀬に出かけた。木々の葉が赤や黄色に色づいている。流れる川に紅葉が映えてとても美しい。旅行の記念に紅葉の落ち葉を一枚拾って持ち帰った。

二文目と三文目は過去形でも問題は無いが、あえてここを現在形にすることで臨場感のある文章となっている。まるで読み手もその場で同じ光景を見ているかのような気持ちにさせる効果を出しているわけだ。

このような表現技法は名作小説などではわりと見かけるが、実際に使うとなると高度な技術のように思う。意識せずとも使えるようになりたいもんだ。

おわりに

冒頭で「文法をしっかりと学べる」とか言っておきながら、取り上げたのは文章作成におけるテクニックの部分となってしまった。しかも片方は章の間のコラムからの引用である。振り返ってみると本書の良い所をこの記事で伝えられたかの自信が無いが、非常に簡潔に文章作成の要点がまとめられている良書なので、ぜひ読んでほしいなぁと僕は思います。

続編に当たる『しっかり! まとまった! 文章を書く』もおすすめ。

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