清々しいほどに冒険小説――『三銃士』

アレクサンドル・デュマが生み出した傑作『モンテ・クリスト伯』は大好きという言葉ではあらわせないぐらいに自分にとって大切な小説なのだが、今回取り上げるのはもうひとつの傑作『三銃士』のほうである。むしろこちらのほうが世間的には有名かもしれない。

あまり知られていないが『三銃士』とは『ダルタニャン物語』という長編シリーズのなかの第一部にあたり、青年ダルタニャンが三銃士との出会いによって成長していく姿が描かれている。だから「『三銃士』というタイトルなのになんでダルタニャンが主人公なんだよ」という野暮なツッコミはしてはいけない。このタイトルに違うことなく三銃士のアトス・アラミス・ポルトスは非常に魅力的な人物で、彼らがダルタニャンに与えた影響は計り知れないものがある。確かに主人公はダルタニャンだが、第一部は紛れもなく「三銃士の物語」なのである。

徹底的に冒険小説してる冒険小説

この作品の魅力はまず「ひたすら冒険小説している」ところだろう。物語は因縁の敵となる謎の騎士との出会いから始まる。そこから行き違いの連続で三銃士と決闘することになるのだが、ある事件をきっかけに勇敢さを認められたダルタニャンは、一転して三銃士と親友の関係になっていく。争った人間が味方になるという少年誌でありそうな熱い展開である。

腕を組んで凱旋するダルタニャンと三銃士。有名な挿絵。

また宿屋の亭主の妻・コンスタンスとの悲恋、王妃の依頼によるイギリス遠征、妖艶悪女・ミレディーの登場、そして勃発する戦争と水面下で蠢く陰謀などなど、読んでいると思わず興奮してしまうような要素がこれでもかと散りばめられている。またイギリス遠征の途上で脱落していった三銃士をダルタニャンが探しに行く場面があるのだが、四人の人間性がよく見て取れて個人的に好きなシーンである。

小奇麗な騎士道物語ではない

『三銃士』という名前から高潔な騎士の物語と思う人が多いかもしれないが、実際はそうではない。意外と野卑な部分も含んでいるのがこの物語である。例えばダルタニャンは躾と称して従僕を殴りつけまくったり、アトスとポルトスは金が入れば酒や賭博に溺れたりと、おおよそ真人間とも言えないような描写が随所にある。また決闘という文化があるからか基本的に登場人物は喧嘩っ早い。清廉潔白で忠義に厚い騎士像を脳内に描いていると、そのギャップに少し引いてしまうかもしれない。

ただ個人的にはそういう面も含めてこの物語の良さだと思っている。正当な人間ばかりの話がおもしろいとも思えない。また古典(特に外国文学)ではそういった面も特定の文化として享受することが大切である。特に金銭面では余れば四人で分配し、足りなくなれば提供しあったりと、そういった面があるからこそダルタニャンと三銃士の一心同体な部分が見て取れるのだと思う。この物語を読むのであれば、表面の小奇麗さではなく、奥にある人間らしさを見てほしいと思う。

おわりに

デュマが綴る物語はやはり面白い! と思わせられた作品だった。手始めに『ダルタニャン物語』を制覇して、それ以外の作品にも触れてみたいと思います。

『三銃士』は近年でも映画化されていたりと長年に渡って愛されてきた作品なので読んで損は無いはず。おすすめです。


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