武器としての教養を身につける方法『知の教室 教養は最強の武器である』

「一ヶ月で本を300冊読む」という、もはや単なる”読書家”という言葉で形容することに違和感のある佐藤優さんの著書。

同著者の『読書の技法』を読んだことがありますが、やはり特筆すべきはその知識量です。あらゆる分野に対して深い造詣を持つ著者が「知識」「教養」について書いた本、というだけで興味をそそられます。

「教養」は普遍的な武器となる

本のタイトルにもあるように、本書のメインテーマは「教養」となっています。ではその教養とは一体なんなのか。僕たちは普段から「教養があること」を良しとしてはいるけど、「教養」それ自体がどういったものかはあまり深く考えない。そんなことを書いている自分でも、ふと天井を見上げて「教養ってなんじゃろか」と考えてみても、フクロウのように頭を捻るばかりで答えが見えてこない。

人によって色々な解釈がありそうな教養という言葉。本書ではそれを「中長期的に役立つ知識」と定義しています。

すぐに役立つような知識は賞味期限が短い。何の役にも立たないように見える教養こそが、中長期的視点からは、役に立つのだ。

昨今のビジネス書の傾向として、実戦的な知識を扱っているものが目立ちます。確かにそれらはすぐに日常の場面に適用できるし、即効性のある知識のように見えます。しかしそういった知識は多くの場合は表面的な理解に留まってしまい、すぐにメッキが剥がれてしまいます。

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そういった表面的な知識とは違う点として、教養は「知識が自分の経験と結びついて体系化したもの」と言えます。経験と結びついているだけに、教養はまるで「血肉」のように自分たちに深く根付いています。身体を形作っている血肉のありがたみを普段から意識する人は少ないでしょう。しかしよく考えてみれば、僕たちの行動すべての資本となっている最重要の役割を担っている存在です。教養も血肉と同様に、人間の基礎的な部分にあたる重要な知識であるということですね。

教養は一見すると確かに役に立っているのがわかりづらいかもしれません。しかし気がつかないだけで、意識してみると行動の基礎となっていたり、新しい知識の土台となってくれたりと、普遍的な価値を持っているというわけですね。

表面的知識ではなく、著者の考え方を読み取る

本から学ぶときには二つの読み方があります。ひとつは本に書いてある記述から知識を直接得る方法。もうひとつは、その文章を書いた著者の思考の流れを読み取る方法です。

好んで読書をする人でも多いのが「ビジネス書は読むけど、文学は読まない」という人です。創作でしかない文学は現実に即していないので役に立たない、という考えなわけですね。ただそういった人は文学の読み方を知らないだけです。

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文学の読み方に必要なのは、先ほども言った「著者の思考を読み取る方法」です。国語のテストに「この時の作者の気持ちを答えなさい」という問題が出なかったでしょうか。あれが嫌いな人は多かったかもしれませんが、あの問題は答えそのものよりも作者の思考プロセスを追体験することで、最終的には自分の思考に活かしていくためのものだったわけです。

話を元に戻しますが、本書でも優れた著者の本を読むことは、その人の”思考の鋳型”を理解することと書かれています。

知識人や学者の著作を読むと、大抵の場合、そのバックボーンにある〝思考の鋳型〟みたいなものが分かりますね

書いた人の「考え」は大した価値は持たないかもしれませんが、「考え方」を知ることは自分にとって大きな価値となってくれます。

紙の本と電子書籍を使い分ける

電子書籍というと「安い」「手軽」といったところが注目されがち。僕もそこに惹かれて利用しています。

しかし著者は紙と電子版でも、使い方に明確な違いを設けています。

私はよく参照する本については、紙と電子版、両方買うようにしています。ただ基本的に読むのは紙です。どうしてかというと、三次元の立体物だからです。本は折り目をつけたり、書き込みをしたりして、〝汚く〟読んだほうがいい。そうすると、どのへんに何が書いてあったかが記憶に残る。ただ、細かい数字やデータなどは電子書籍で検索したほうが早い。だから、一見無駄に見えても、教養をつけるという意味では両方買ったほうがいい。

言うならば、それぞれの良いとこ取りをした使い方。

紙の本だと思いつきや疑問をその場で書き込むことができるので、本をそのままノートのように使うことができます。その反面、電子書籍はそういったカスタマイズ性には乏しいものの、デジタルの強みとして検索の使いやすさがあります。「あれどこに書いてあったかなあ」とド忘れした時に、本文検索ができるのは地味に嬉しいですよね。またKindleだとマーカーを引いた部分をウェブ上で確認できる機能が神がかっています。

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毎度のように両方を買うのは財布が悲鳴をあげるのでお断りしたいですが、本当に気に入った本や何度でも読み返したい本はそうする価値は大いにあるように思います。それにしても個々の本によって紙と電子版を使い分けることは慣れていたけど、同じ本をそれぞれの媒体で購入する発想は無かった。

教養を理解し、習得する架け橋となってくれる本

本書は佐藤優さんの過去の論考や対談を再編したものなので、良く言えばバラエティに富んだ、ちょっと悪く言えば幅の広すぎるテーマを扱った本となっています。しかしそれぞれの章の内容を俯瞰してみると、著者の思考法やその膨大な知識を裏付けているものが見えてきます。

先ほども書いた「著書の考え方から学ぶ」ということに向いている本だと思います。もちろん本文の内容をダイレクトに受け取っても興味深い内容が多いですよ。

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