「知らない」って本当に悪いことなの?『「無知」の技法』

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「知らない」ということは、本当に悪いことなのか。 「知っている」ということは大切なことに思えるが、本当にそうだろうか。

「無知」の技法』は、人生において「知らない」からこそ得られるものがあることを、豊富なエピソードと共に教えてくれる本です。

本書では、新進気鋭のコンサルタント2人が、世界のあらゆる領域において 「知」の思考変革を模索する。過去や既知にとらわれず、 「無知」の状態を最大限に活用し、「出現する未来」に臆せず しなやかに対応する思考アプローチ! イギリスでマネジメントブック金賞に輝いた書、待望の邦訳書

「知らない」ということを恐れるのではなく、むしろ「知らない」ことを武器にできる。この本を読み終わるころには、それが理解できるようになります。

人は「無知」を極端に恐れる生き物

僕たちは「知らない」という状況にストレスを感じやすい生き物です。疑問が浮かんだ時に、それを解決しないままでいるのは不安ですし、どこか気持ち悪さを感じます。原始時代では「知らないものを放置する」というのは生命の危機に直結したわけなので、そういう性質を持つに至ったのも仕方ないと言えばそうかもしれません。

私たちは神経学的に、予測のつかないものを避け、確実なものを好むようにできているのだ。

しかし原始時代とは違い、現代ではモノや情報が溢れかえっています。それらの全てを認識し、理解しようというのは無謀なことです。というよりも、不可能でしょう。昨日の確実が、今日には不確実になっているような時代なのです。

つまり現代に生きる僕たちは何でもかんでもを「知りたい」と思う積極性よりも、むしろ「知らないこともある」ということを真正面から受け止められる心の方が大切なのです。

「知らない」ということへの耐性が無いと損な人生が待っています。知らないことから早く逃げ出したいばかりに、安易に権威者の意見を信用してしまうということもあり得ます。また仕事の上で「知らない(わからない)」という事を隠そうとして見栄を張り、思わぬトラブルに繋がってしまうということもあり得るのです(本書にはこのような「無知」を受け止められないばかりに大変な目に遭う人のエピソードが非常に多い)。

「知らない」ということから目を瞑ってしまうと無用なトラブルを招いてしまいます。しかし逆に積極的に受け止めることは大きな力になってくれるのです。

「無知」であることが与えてくれるもの

「知らない」ということを認められないことの問題点は、それと同時に学ぶための機会を放棄してしまっていることです。無知である事実から目を背ければ、その地点から前に進むことはありません。しかし無知を許容することができれば、そこには多くの機会と可能性が待っているわけです。

「わからない」と認めるからこそ、ものを学べるのだ。知らないという闇は、新たな光を呼びこむ自由と余白を差し出している。

周囲に「知らない」「わからない」と言うことは、確かにリスクもあります。ただそれ以上にプラスの側面もあることを忘れてはいけません。弱みを開けっぴろげにすることで信頼感が生まれるということもあります。何よりそういう姿勢が、他の人の無知に対する姿勢を変化させることにも繋がるからです。

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またあえて「知らない」という前提で思考してみることで、創造性を最大限に発揮できることもあります。よくある言い方をすれば「ゼロベース」での思考ができるようになるわけです。

既存の知識というのは、時に自由な発想の足を引っ張ります。本書ではこれを「知の呪縛」と呼んでいます。人は知識を与えられれば与えられるほど、知識を持っていない状態を想像することが難しくなると言うのです。自分を助けるための知識が、逆に足を引っ張ってしまうわけですね。

知の呪縛とは、知識が増えることにより、その専門領域をシンプルに思考・説明できなくなる状態をいう。

もちろん知識があることが絶対悪というわけでは無いですが、時には既存の知識は一旦横に置き、無知になりきって考えてみる。そうすると固定観念に縛られない発想ができるようになり、思いがけないアイデアが生まれることにもなるわけです。

見るために目を閉じる。知識の介入をあえて排除し、知らない姿勢で望むことによって、見ていなかった場所に存在する知に心を開くのだ。

「知らない」ということを受け止められる、そして時には知っていても「知らない」という状況を脳内で再現できる。そうすることで得られるものは、実は大いに存在するのです。

知識に対する認識を変えてくれる本

僕たちは未知のものと共に生きていくしかありません。それに目を瞑ることは不可能なのです。本書を読むことで、「知らない」ということに対して不安に駆られたり、恥ずかしくなったりする必要は無いということに気がつくことができたように思います。

本書冒頭に書かれているように、この本はハウツー本ではありません。実際のエピソードに触れることによって教訓を与えてくれます。「知識」というものに対する考え方が変わりうる可能性を秘めている本です。

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