萌えたり考えさせられたりする漫画『竜の学校は山の上』

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ダンジョン飯』『竜のかわいい七つの子』など、このブログではたびたび取り上げている九井諒子さんの漫画。今回紹介する『竜の学校は山の上』は、九井諒子さんがウェブ上や同人誌で発表した作品が収録された短編集となっております。原点とも言える作品かもしれません。

九井諒子さんの作品といえば、誰しもが言うように「リアルとファンタジーが融合した世界観」が最大の特徴です。それは『竜の学校は山の上』でも同様です。

例えば下半身が馬の「馬人」と共存している社会だったり、例えば「竜」を研究する竜学部なるものが存在する大学だったり、例えば翼の生えた女の子のいる学校だったり――。当たり前の風景にしれっと架空の存在が混ざっているのだけれど、そこに違和感を全く感じさせない。それはやはり作者の手腕が可能にしていることなのでしょう。

表題である『竜の学校は山の上』より、部長が部内目標を説明するシーン

九井諒子さんはそういった架空の存在を通して、現実世界に潜む問題を読者に投げかけているように思います。「投げかける」と言うよりは、読者に「投げつけている」と言ったほうがいいかもしれません。そのぐらいにキレがあります。

例えば『現代神話』という話では「猿人」と「馬人」という2種類の人間が共存している。そこでは労働意欲が高く体力にも秀でている馬人が、猿人の雇用を奪っていることが社会問題になっているのです。

「現代神話」より、馬人の労働規制に関するニュースのシーン

これは漫画の中の、しかもファンタジー作品の設定でしか無いのですが、しかし現実世界にも通じるものがあるように思えないでしょうか。例えば日本における外国人労働者に関する問題は、この状況にかなり近いように思います。猿人を「日本人」に、馬人を「外国人労働者」に置き換えるとわかりやすいです。

もちろんそのような意図が作者にあったかどうかは知る由もありませんが、僕としてはそのように現実を取りまく問題にまで思いを馳せさせる作品というのは、それだけで凄まじいことに感じます。

また『竜のかわいい七つの子』でも感じましたが、その作品毎の雰囲気によって画風を変えているのは見事としか言いようがありません。短編全体を見れば和洋折衷、夢うつつが入り混じったカオス状態。しかしそれぞれのタッチが若干変わっているので、各話に新鮮な気持ちで入っていくことができます。あとこの人の漫画は女の子がいちいち可愛いのがたまらん。

「勇者が世界を救った後の世界の話」などもあり、ファンタジー好きの人なら間違いなく気に入る漫画です。また一話を読み終えるごとに「この作品を通して作者は何を言いたかったのか?」といったテーマを見出す読み方をしても面白い一冊です。

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