文具を愛する12名が語る「文具術」──『文具上手』

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文具ウェブマガジンを運営する土橋正さんの著書『文具上手』は、様々な仕事に携わる12名に文具に対するこだわりをインタビューし、まとめたものとなっている。

僕も文具は大好きであるが、使ったり眺めたりするのと同じぐらいに、他人の文具に対するこだわりを見聞きするのは楽しいものだ。本書に登場する人も「文具が好きなんだな」ということがインタビュー内容からビンビンに伝わってくるので、読んでいるだけでニヤついてしまうような場面が多かった。そういった文具好き同士の共感を感じられる一冊だ。

同じ文具でも、使い方は十人十色

最初に思ったのは職種が違えど使用する文具は同じものが多いということだ。例えば僕も愛用しているラミーの万年筆などはインタビューの中では度々登場するし、他にもロディアのメモ帳なども愛用者が多い。

ただ印象深いのは同じ文具を使っていても、その人によって全く違う使い方をしているということだ。例えば空間デザイナーの平澤太さんはラミーサファリ万年筆を何本も持っており、月替りで順番に使うというおもしろい使い方をしている。しかし一方で小児科医の杉原桂さんは文具好きでありながら仕事中に万年筆を使うことはない。なぜかというと多忙な診察の中でペンをどこかに忘れてしまうことが多いので、仕事中はあえてボールペンで済ませるのだという。

人によって使い方が違うのは特に珍しい事でもないだろうが、おもしろいのはそういった使い方をする理由の部分にその人の携わる仕事の性質や、文具に対する思い入れが強く現れるところだ。文具を買うだけで満足してしまう僕のような人間も多いなか、本書に登場する人は全員が仕事においての「武器」として文具を活用している。その姿勢には見習うべきところが多いように思う。

その仕事に特有の文具もある

また「その仕事に無くてはならない文具」というものもあり興味深い。

例えば経理プロフェッショナルである染谷義之さんは電卓を必需品としてあげている。また電卓も低価格のものはやはり使い心地が悪いらしく、6,000円という価格のものを使用しているという。またTVプロデューサーである疋田智さんのインタビューの中では電波時計が紹介されている。これは秒刻みで動かなければならないテレビマンとして、時間のずれる心配の無い電波時計が最適だからだという。どちらもあまり話題にはあがらなそうな文具だが、二人にとっては絶対にそれでなければならないこだわりがあるのだろう。

先ほども言ったけれど、文具を通すとその人が携わる仕事がどのようなものかがボンヤリと見えてくるのがおもしろい。6,000円の電卓を見れば経理においてそれがかなりの重要性を占めているのかがわかるし、電波時計を見ればテレビ業界が時間に対してどれだけシビアなのかが見えてくる。さらに言えば、使用する文具やその活用方法を見ていくとその人の性格まで見えてくるように思う。「蔵書棚を見るとその人の性格がわかる」と言うが、文具も同様に使う人の性格が現れるものに思えてならない。

おわりに

色々と語ったけれど、結局は「文房具が好きな人の話は聞いているだけでおもしれーなー」というのが一番の感想。共感できる部分だけではなく、使い方などで参考になる部分も多く、文房具というものの良さに触れられる本に思います。

Kindleセールになっていた『文具の流儀』も合わせて購入したので、こちらも読んでみたいと思います。

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