逆境を笑うための、シンプルな思考法/川崎宗則『逆境を笑え』の感想

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メジャーリーグで面白い日本人として活躍中の川崎宗則選手。今シーズンも、登録メンバーから外れているのに優勝争い中のチームにムードメーカーとして帯同を許されるという、ある意味では快挙と言えることを成し遂げています。日本人が海外の地で盛り上げ役として活躍するなんて、前代未聞ですよ。

先日、彼の著書である『逆境を笑え 野球小僧の壁に立ち向かう方法』を読みました。

読むだけでパワーを貰えるような素晴らしい本でした。川崎選手が、異国の地でもファンの心を掴んでいる秘密を掴めたように思います。彼の考え方からは、本当に学ぶべき部分が多いです。

この記事では特に印象に残った、川崎宗則選手の「逆境を乗り越えるための考え方」に焦点を当てて書評を書いていこうと思います。

やるべきことをシンプルに考える

僕が川崎選手の考え方で一番驚いたのは、「気持ちの切り替えの早さ」です。

ヘタクソなのはわかってたじゃん。それはもう、認めてる。だったら、やるしかない。

これは試合で大失敗をしたエピソードの後に書かれていた一文です。

普通の人は、あまりこうやってすぐに気持ちを切り替えられないと思うんです。確かに失敗したら、二度とその過ちを犯さないように練習するしかない。ただそれが理解できていても、人間の気持ちはそんなに単純じゃない。それをいつまでも引きずってクヨクヨしてしまい、元のベストな精神状態に持っていくのにかなりの時間がかかってしまう。一般的な人の気持ちの切り替え方は、ほとんどの場合は時間がかかるものです。

ただ川崎選手の考え方は、失敗から次の行動への流れが異常に早い。
「失敗した。だったら練習だ」と機械のように非常にシンプルに考えているのです。もちろん実際には落ち込んだりもしているのですが、あえてそういった感情を出すことをしません。

また他にも川崎選手の失敗に対する考え方を知ることができる一文があります。

もちろん、「アッチャー、失敗した」とか、そう思うことはあるよ。でも、それはその場のミスであって、いくらでも取り返すチャンスがある。だって、生きてるんだから。今を生きていれば、いいこともあるし、よくないこともある。よくないことがあっても、次にいいことがあるようにまた頑張ればいい。

そもそも、人生の成功とか、人生の失敗とか、生きてる限り、そんなの、おれはないと思ってる

彼が環境を変えても成功する理由がわかるような文章です。失敗を引きずって立ち止まってしまうことが、もっともやってはいけないことなのでしょう。

恥をかくことより、それを恐れて行動しないほうが恥ずかしい

こちらはメジャーリーグという言葉が通じない環境で、川崎選手がどのように乗り越えたかのエピソード。

あとは、ベンチからのサイン。それも一つずつ、確認した。コーチのところを訪ねて、何度もサインを出してもらって、それが何なのかを紙に書いてもらう。とにかく訊きに行った。恥ずかしがったらダメ。自分がやるべきプレー、送りバント、セーフティー、走っちゃいけない、走っていい、そういうサインを覚えれば、あとはグラウンドで発散するだけだから。

そしてこう続いています。ちょっと長いですけど。

プライドなんて、何もないよ。わからないのは勉強してこなかったから。そりゃ、後悔した。もっと勉強しておけばよかったって。だから恥をかこう。恥をかくことよりもやろうとしないことのほうが恥ずかしい。

プロ野球選手になってすぐの頃、未知の世界を怖がって、不安で、何もしようとしないことがあった。やろうとしないんだから、できるわけがなかった。やろうとしないから、いつまでも怖いまま。やってみて、恥をかく。やってみて、痛みを知る。行ってみて、殴られれば、その痛みがわかる。ああ、これくらいの痛みか。それがわかるだけで、大丈夫だと思えるかもしれない。

どんな痛みなのかも知らないくせに、どうしよう、どうしようと脅えていても、結局は前に進めない。脳みそばかりでっかくなって、肝心の足が一歩も動いてない。 だから、前へ出る。

頭でっかちになって理論ばかり振りかざし、結局は何も行動しない人は多いですが、聞かせてやりたい言葉ですね。また「痛みを知るから恐怖を乗り越えられる」という考え方も素晴らしい。

とにかく彼は立ち止まるということをしません。とにかく進んで、時には障害にぶつかることもあるけど、すぐに立ち上がって前に進んでいく。何かと立ち止まって考えてしまう僕のような人間からすると、彼の生き方を見ると目の覚めるような思いです。

物事のプラスの側面に目を向ける

最後は彼がマリナーズで控え選手としての役割を与えられた時の話。

これはチャンスだと思った。

おれにとっては、この準備を1年続けるということは、もう一度、体を作り直すに等しい。しっかりトレーニングをして、体を鍛えていれば、ライアンが休むわずかなチャンスに試合で結果を出せる。しかも、その結果を評価されてレギュラーになれれば、今まで以上のプレーができる。これはいいぞ。

レギュラーよりもむしろ、こっちのほうがいいぞと思った。

ここでも彼の優れた視点が垣間見れます。と言うのも、メジャーへ移籍する選手というのは日本ではトップレベルの活躍をしていた選手がほとんどです。その選手が海外へ行ったはいいけど補欠ということになったら、普通は気持ちが腐ってしまいそうなものです。

ただ川崎選手はそんなマイナスの側面には目を向けず、ただそれをチャンスとして捉えている。これは本当に素晴らしいことだと感じました。

僕も中学の時が野球部で、補欠だったことがあります。ただやはりと言いますか、川崎選手のようには考えられませんでした。とにかく補欠でベンチに座っていることが恥ずかしくて仕方がない。なんで俺がレギュラーじゃないんだ。そんな風に思っていました。当時の僕にも、川崎選手のような考え方ができれば良かったのですが……。

物事には必ずプラスとマイナスの両面が存在するものです。ただ多くの場合、マイナスの面ばかり気にしてしまうのが人間です。そうではなく、川崎選手のようにプラスの側面に目を向けることが成功の秘訣なのでしょう。

終わりに:なぜ川崎宗則選手は逆境を笑い飛ばせるのか

川崎宗則選手が逆境を乗り越えられる理由。それは「自分のやるべきことをシンプルに考えているから」に他なりません。失敗をしたなら、取り返すしかない。自分が補欠だったら、それを良い機会として活かすしかない。全てをシンプルにわかりやすく考えるから、全く無駄が無いのです。だから環境に適応するのが早いし、行動すべてに潔さがある。イチロー選手が彼を目にかけているのも、そういった部分に好感を抱いているからなのでしょう。

ほとんどの人は逆境に直面すると、無意識に立ち止まってしまいます。人によっては引き返してしまうかもしれません。ただ川崎選手は、そこで前に出る。逆境にぶつかりはするけど、その中でどうやって乗り越えていくか考える。これが、一般的な人との決定的な違いです。歩みを止めないのです。普通の人が容易にできることでは無いと思います。凄い。

本書には、ここで取り上げた内容以外にも川崎選手の野球に対しての哲学が多く書かれています。特に多いのが崇拝しているイチロー選手についてのエピソード。「どれだけ好きなんだよ!」とツッコミを入れてしまうほどの充実度合いです。かなりおすすめできる本ですよ。

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