「わかりにくい文章」を書けることの大切さ『論文の教室 レポートから卒論まで』

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日本の教育ではあまり扱われない「論文の書き方」について解説された本。

「論文の書き方なんてさっぱりわからないよ!」という大学生や社会人向けとなっており、また内容も作文が苦手な主人公が上達していくという物語形式で面白おかしく書いてあるので取っ付き易い。

基本的に文章を書くのはもっぱら「ブログ」という僕ですが、論文の書き方からでも学べる部分もあるかなと思い読んでみた次第です。ブログだの論文だの書籍だのと言っても結局は同じ文章ですからね。その中から印象的な部分をまとめてみたいと思います。

創造は、最初は模倣から始まる

何かを習得したい時に「まずは模倣する」というのは非常に効果的です。僕の場合で言うと、ブログはそうやって勉強していった側面は多い。HTMLやCSSは他サイトをほぼ丸パクリしていたし、さらに言えば記事の書き方や構成などは今でも他のブロガーさんを参考にしまくっています。

ただそうやって他人がやっていた方法を自分でやってみると、段々と「ここはこうしたらいいのか」ということが理解できるようになってきます。最初は他人のパクリでしか無かったことが、自分のオリジナルの知識に変化していくわけです。最初は模倣だったことが次第に創造に変わっていくことで、人は何かを学ぶのだと思います。

話は戻り、論文でもそれは同じです。参考文献を集めれば「何を書くか」は決まります。ただそれを「どのように書くか」という点はつまづきやすい。そういう時は偉い人の論文の形式を模倣してしまうことが効果的だと本書には書かれています。

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注意したいのは、真似をするのは「形式」であって「内容」では無いということです。内容を真似てしまえばそれは丸写しをしているようなもので、自分の考えがそこにはありません。盗作と同じです。ただ自分の考えを表現するための「形式」を真似るのであれば、そこには内容に関してはオリジナリティがあるから取り敢えずはセーフなわけです。

──内容を真似すりゃそうだけど、ここで真似するのは形式だからOK。だから、学会誌に載っているまと もそうな論文を手元に置いて、その形式を参考にしながら書いていくといいよ。まず、こういうことを書くのか……、で、つぎにこういうことについて述べるわ けか……、そしてこんなふうに引用して……、ってやるわけ。

形式も真似するうちに、自分に適したフォームができあがってきます。「模倣」と聞くと顔をしかめる人も多いかもしれませんが、創造的な活動をする際の入り口としては「形を模倣する」というのは最善策なのです。

「わかりやすい」が文章の全てではない

非常に共感した部分です。それは「わかりやすさ」について書かれた箇所。

文章術に関する本は好きなので積極的に読んでいますが、必ず重要視されるのは「文章のわかりやすさ」です。自分自身も文章において最も大切なのは「わかりやすさ」だと思っています。

ただ著者は「わかりやすかったら完璧な文章」というわけではない、と主張します。

読みやすさ・わかりやすさというものは、あらゆる文章がめざすべき絶対的な価値ではない

確かにわかりやすさは大切だけど、そればかりを求めていると文章というものは非常につまらないものになってしまいます。「わかりやすさ」の極地は無個性です。そこには抑揚やレトリックは存在せず、淡々とした文章しか存在しないことになってしまいます。そういった意味では、常にわかりやすさを求めるというのが正解とも言えないのです。

例えば小説などでは表現技法として「あえて”わかりにくく”する」といった手法を取っている作品もあります。それは文章をわかりにくくすることで、時には登場人物の複雑な心情を表現しようとしたり、また時には狂気や絶望にまみれた情景を表現したり、といったものを狙っているわけです。それをわかりやすく、ストレートに書いてしまったら情緒もクソもありません。

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大切なのは「わかりやすさ」を理解しておくことで、時にわざと「わかりにくく」することもできる技能の幅を持っておくことだと思います。最初からわかりにくい文章しか書けない人は、狙ってわかりやすい文章を書くことはできません。ただ逆に、わかりやすい文章を理解している人は、必要な時には「わかりにくくする」という選択を取ることもできるのです。「わかりやすい文章が書ける」ということの意義は、この点にあります。

わかりやすく書くばかりが能じゃない。とはいうものの、わかりやすく書くべきときにそれができないのもやはり不幸だ。

「わかりやすさ」というのは大切ではあるものの、言ってみればそれは前提でしかありません。そこから個性を肉付けしていくことが、面白い文章には求められるように思います。

「論文の教科書」としてどうぞ

この記事で取り上げたのはブログにも関連するような箇所ばかりになっていますが、実際には論文の資料集めから文章構成まですべてを解説してくれている良書です。本当に「レポートから卒論まで」この一冊を読めば事足りるかと思います。レポートに忙殺される予定の新大学生は、とりあえずこの本を読んでおこう。

巻末には論文完成時のチェックリストや使うとダサい「禁句集」など、付録も充実です。まさに論文の教科書と言えます。値段が¥599とお安いKindle版がおすすめ。

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