【読書感想】『考える技術・書く技術』板坂元著

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30年前の本だけれどメインテーマは「いかに頭を使うか」ということなので、現代にも通ずる内容が多い。今もなお重版されているのは、それだけ多くの人がこの本に普遍的な何かを見出しているということなのだろう。

この記事では本のタイトルにもなっている「考えること」と「書くこと」に関して、本書の中から印象に残った個所をまとめていきます。

多角的な考え方を養う読書法

本書の中では読書は「考えるための材料の仕入れ」というように位置づけられている。どれだけ思考力に長けていても、その材料が陳腐では話にならない。そして良い材料を仕入れるためには、読書の技術を上手に身につけることが大切だと著者は言う。

「ベストセラーの効用」という章では、その時代にベストセラーになった本を読む意義について書かれてある。著者が言うには、ベストセラーには売れるだけの理由が必ずあり、それを見つけることが大切なのだという。一時的にだろうと、それが売れたということは社会がそれを求めていると考えることができる。つまりベストセラー本はその時代の社会を見通す資料となるわけだ。

ある社会なり時代が、なぜこういう本を要求するのか、という問題を考えるには、ベストセラーというものは、すばらしい資料となる。

またあらゆるジャンルを横断して読書をすることも大切だという。読書は自分の携わる、もしくは興味のある分野の本ばかりを選びやすい。しかしそれでは視野が狭くなってしまい、著者の言うところの「見通しのきかない専門バカ」になってしまう。偏ったモノの見方を避けるためにも、時には自分にとって未知のジャンルの本を読むことも大切なのだろう。

直接に関係のある本だけではなく、関連のある他の諸方面に知識を拡げることは、専門バカにならないためには絶対といってよいほど必要なことであろう。

説得力を出すための文章術

文章を書く際に「こちらが誠心誠意であれば、相手はかならず賛成してくれるものだ」と言うような甘い考えだと、情報社会で取り残される恐れがあると著者は言う。もちろん誠意は必要だろうけれど、それ以外にも人を説得するための技術が含まれる必要があるというわけだ。本書ではいくつか具体例があげられている。

ひとつは「数値化」を行うということだ。「いつも」「たいてい」といった言葉は便利だけれど、できるだけそういった表現を避けて数字に置き換える。そうすることで読み手はより書かれた内容を具体的に想像しやすくなり、共感しやすくなるわけだ。具体的な表現ができるということは、それだけ信頼を得やすくなるのである。

何パーセントとか何分の一とか数字に直して考え、かつ表現することは、誤解を防ぐ上にも大事なことだ。

また文章術ではとにかくわかりやすさ・簡明な表現を重視する風潮があるけども、使い方によっては難しい言葉や独自の表現も大切になるのだという。どういうことかというと、文章というモノはスラスラ読めるよりも、多少はわかりにくい部分があったほうがそれを乗り越えたときに快感があるので、結果的に後者の方が人を惹きつける文章になりやすいらしい。

同様のことは井上ひさし氏の『自家製文章読本』にも書かれていた。比喩表現などは普通に考えればわかりにくさが生まれる可能性もあるので、読みやすさという点では邪魔になりかねない。しかし実際は「その先を知りたい」という欲望を換気させる効果があるというのである。

ただこれはやりすぎると衒学的な印象を持たれて説得力は愚か、信頼もクソもなくなるので注意が必要かもしれない。クドくならない程度に実践するべきだろう。

おわりに

読んでいると部分部分で危ない内容もあり、正直なところハラハラさせられた(「マージャンに比べればゴルフのごときは足軽のやるゲームにすぎない」とか)。そういった箇所に目を瞑れば頭を使うこと全般について言及されているので、バランスの良い本だと思います。

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