思考は「質」と「量」で整理する『思考の整理学』

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コンピュータが人間の代わりとして台頭している現代では、人間が創造性を発揮することが非常に重要な意味を持っています。そして創造的な人間であるためには、頭の中に余計なものが無く、必要な情報はすぐに取り出せるような状態――つまりは思考が整理されていることが求められます。

「考える」ということの重要性を見つめなおしたいと思って読んでみました。この本はハウツー本ではなくエッセイなので、書いてある内容からダイレクトに学ぶというよりは、そこから思考するヒントを得るような形で読み進めてみることに。

なぜ思考を整理する必要があるのか。そもそも思考の整理とはどういうことなのか。その辺りを考えるための筋道をやんわり示してくれるような本です。

思考整理には「質」と「量」の2つのアプローチがある

思考整理と言っても様々な方法がありますが、大きく分けると2つの方法に分けられます。

ひとつが思考の「」を変化させていくこと。例えばこうして僕が本から得た情報を、自分の考えや経験というフィルターを通して文章にまとめているのは、小難しい言い方をすれば「情報の質を変化させている」ということになります。

もうひとつが「」の変化。これは頭の中のいらない情報を捨てたり、必要なものは忘れないようにするといったものです。こっちは部屋の掃除みたいなものなので、わかりやすいですね。

ではそれぞれが具体的にどういったものなのかを、もそっと詳しく考えていきます。

情報を抽象化(メタ化)していく

思考を整理するには、情報を質的に処理するのがひとつの方法と先ほども言いました。では質的に処理するとはどういうことかというと、「情報を抽象化(メタ化)」していくことと言い換えることができます。

抽象化とは「それぞれの物事の共通点を見つけて、ひとつにまとめること」という意味合いが比較的わかりやすいかと。例えばブログのカテゴリー名などは、それぞれの記事を共通点によってまとめているという点で抽象化していると言えます。

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アイデアなどは、思いついた段階ではあまり大きな価値はなく、そのままでは使い物になりません。しかしそれに自分の思考や経験を関連づけたり、また別のアイデアと掛けあわせてみることで、初めて大きな価値を持つようになります。ただの思いつきが、抽象化を経ることによって普遍的な意味を持つようになるわけです。

着想もそのままの状態では無意味になってしまうけど、抽象化によってそれをいつでも使えるような状態にしておく。これも広い意味では「思考を整理している」と言えるわけですね。思考を使うための準備が「質的な処理」によって行われているのです。

抽象化のためには考えを「寝かせる」

ただこれだけだと抽象化の必要性はわかっても、具体的な方法がわかりません。そのための方法のひとつとして著者は「あえて考えを寝かせておく」ことが効果的と述べています。

思考の整理法としては、寝させるほど大切なことはない。思考を生み出すのにも、寝させるのが必須である。

考え事をしている時というのは、その場でウンウン唸っていても逆効果になることが多い。むしろ一定期間その考えを放置しておく。こうすることが有効というのが著者の言っていることなわけですね。

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その具体的な理由は本書には断片的にしか書かれていないのですが、僕の思う理由のひとつに「自分の考えを客観的に見れるようになる」ことがあります。

ブログの例えばかりで申し訳ないんですが、記事を書いている時には至らなかった考えに、翌日になって読み返してみた時にあっさり到達するということは非常に多いです。まとまらなかった記事が、次の日には嘘みたいに書けるというということもあります。

これはひとえに間をおいたことで、今までとは違った視点から物事を考えることができるようになるからなのでしょう。真剣に考えているつもりでも、実は堂々巡りになっていることは多いです。それを仕切りなおすために、寝かせることが有効に働くのだと思います。

抽象化のためには複数の物事から関連する部分を見出さないといけません。ずっとひとつの考えに悩んでいては抽象化は難しいわけですね。

思考は忘却によって整理される

今度は思考を量的に処理することで、整理しようという話。部屋の掃除みたいなものだと言いました。

そのための方法として著者は「忘却」が最も大切だと述べています。

思考の整理には、忘却がもっとも有効である。

言うならば「思考の取捨選択」をするための方法が忘却です。ゴミ出しです。不必要なものは頭の中には置いておかずに、忘れたほうがいいわけです。

また忘却という名のふるいにかけられてきたアイデアは、同時に優れたアイデアであると考えることができます。歴史に名を残す古典文学は、常にこの「忘却のふるい」にかけられてきました。それでも現代まで残っているからこそ意義深く、普遍的な存在になっているわけですね。

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忘れることを恐れてはいけません。むしろ大いに忘れてしまうべき。どんどん忘れて、それでも残った考え・アイデア・着想こそが、自分にとって大きな意味合いを持つわけです。

上手に物事を忘れる方法

著者は忘れるための具体的な方法のひとつとして、「メモ帳」をあげています。

メモに書く。書けば安心する。安心すれば忘れやすい。しばらくして、見返す。ほんの十日か二週間しかたっていないのに、もう腐りかけているのがある。どうしてこんなことをことごとしく書きつけたりしたのかと首をひねる。風化は進んでいるのである。

自分で記憶せずに、いちど記憶をメモ帳に任せてみる。そうしてしばらくして、冷静になったらまたメモを見返してみる。「やっぱりいい考えだなあ」と感心することもあれば、「なんでこんな馬鹿なこと考えたんだろ……」と落ち込んだりもする。このプロセスが大切なわけですね。

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僕もブログを始めてからメモを頻繁に取るようになりましたが、上記のようなことが多いから不思議です。アイデアというものは一度自分から手放すと、面白いぐらいに形を変えて、また自分に飛び込んでくることがあります。それはやはり忘却の作用によるものなのだと思います。

またメモ帳というのは、先にも言った抽象化にも便利な存在です。メモ帳を読み返すと、別のページに書かれた物事が化学反応的に新しい物事へと昇華していくことがあります。それぞれの項目が関連して新しい発想へと繋がるのは、まさに「思考の質が変化した」と言えそうです。

とどのつまり「思考の整理」とはなにか

いまいちピンとこなかった「思考の整理とはなにか」の考えをまとめると 、「思考を必要なものと不必要なものとに取捨選択し、さらに実用に足る状態に昇華させておくこと」と言えそうです。取捨選択が「量的処理」で、昇華させておくのが「質的処理」という感じです。

冒頭でも書きましたが、この本はハウツー本ではなくエッセイです。中には科学的な根拠の無い著者の経験談や推測のようなものも多いので、あまり気張って読むと肩透かしを食らうかもしれません。あと以前に読んだ『乱読のセレンディピティ』と共通する内容も多かったかな。

ただ「”考えること”について考える」という機会を与えてくれる点では、非常に有意義な本です。1983年に出版された本ですが、思考というものの普遍的であるということを実感させられます。

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