【読書感想】親切な文章読本『伝わる! 文章力が身につく本』

整理をしようと本棚をガサゴソやっていたら、出るわ出るわ積読が。その中からヒョイッと読んでみたのが今回の一冊。

いかにもありがちなタイトルの本ですが、読んでみてその内容の充実具合と指南の丁寧さに驚かされます。文章作成のノウハウや考え方などが80通りも用意されているという充実ぶり。

分類としてはビジネス文書向けの本なのですが、ブログに応用できるような内容もあったので、その辺を中心に取り上げつつを感想をば。

手垢の付いた「決まり文句」は使わない

食べ物が美味しいことを表現するときには「ほっぺたが落ちそう」、嬉しさを表現するときは「天にも昇る心地」などなど、日本語には長い間使い続けられてきた決まり文句(常套句)が多く存在します。

使う側はややもすると「小粋な言い回しをしてやったぜ」と考えているかもしれませんが、著者はそれを「手垢がついた表現」とぶった切っている。

誰か、センスのよい先人が編み出したころには、とても新鮮だったことでしょう。なるほど気が利いていると重宝され、広く使われるようになりました。やがて手垢がつき出し、使うとその人の文章感覚さえ疑われるようになりました。

こういった表現は大勢がもつ「共通イメージ」に頼ったものであり、それらに頼りすぎると逆に現実とのズレが生まれてしまう可能性があるというのが著者の指摘です。単純に面白みも無いですよね。

confidence-589037_640

思うに、こういった表現は「思考の放棄」と考えることもできるような。表現というのは言葉通り「現実を表す」ためのもの。そこには書き手が実際に感じたリアルな想いがストレートに込められているべきです。

それなのに安易にそういった文句に頼ってしまうのは、「表現する」ということの土俵にすら立っていないように思います。ただそれっぽい言葉を選んでいるだけです。自分が読み手だとしても、拙かろうが自分の頭を使って考えた言葉のほうが、心には響くだろうと思います。

本書に載っている例には、ブログでもよく見かける「~をご存知だろうか?(文の始まり)」「~する今日このごろである(文の締め)」などもあげられています。自分も油断すると使いそうになる表現なので、気をつけよっと。

感情は押し付けず、読者に想像してもらう

例えばある感動エピソードを聞かされた後に

「どうですかこれ!めっちゃ泣けますよね!ね!?」

みたいにグイグイ来られたら、99%の人はドン引きするのではないでしょうか。出る涙も出なくなります。

上の例は大げさに言いましたが、文章でも同じようなことをやってしまうことは意外と多い。例えば本書であげられている例として「感動した」「嬉しい」などの感情語を使うことや、また大げさに表現するために「なんとも~」「~と言うではないか」を多用することなど。これらは言ってみれば押し付けがましい表現なので、読者には好まれません。

question-mark-96288_640

以前に「熱い文章を読むと、読者は冷める」という記事を書いた自分としては非常に共感できる指摘です。人間はガツガツくる人には、反射的に引いてしまう性質があります。それは文章でも同じです。感情は押し付けるものではないのです。

そこにあるエピソードが本当に感情を揺さぶるようなものだったなら、あれこれ言わなくても読者の心には自ずと感情が湧き上がります。小細工はいらないわけです。

喜びや悲しみ、怒りなどは、それを印象的に表す具体的な事実や状況をしっかり描くことで、読み手に強く印象づけられます。

書きながら考えず、考えてから書く!

設計図なしに家をたてるようなものです。文章もしっかりとした設計図を基に書くべきです。

僕もどちらかと言えば書きながら考えるタイプなので少々耳が痛かったり……。しかし確かに熟考の上で書いた記事のほうが書き上げるまでがスムーズですし、論理的な文章にも繋がりやすいです。なにより途中で迷走して、ウンウン唸るストレスが無いという大いなる恩恵が。

ショウペンハウエルの『著作と文体』にも似たような話があったことを思い出しました。ショウペンハウエル曰く、著作家には3つのタイプがあり、第一に「何も考えずに書く人」、第二に「考えながら書く人」、第三に「思索を終えてから書く人」がいるそうな。そして真に読むべきは、やはり第三の著作家によって書かれた作品のみというのがショウペンハウエルの考えです。それ以外の著作家は書くために書いている(お金稼ぎのためなどで)ので、読む価値が無いという内容でした。

thinking-272677_640-min

ショウペンハウエルが言ったからそれが絶対的に正しいというわけではないですが、非常に納得のいく主張です。思考を終えてから書くことは先ほども言ったように時間短縮につながるので、書き手の文章執筆の負担を減らす効果があります。また何より読み手からしても、行き当たりばったりで書かれた文章よりも、よく考えられた末に生まれた文章の方が読みたいはずです。

普段から文章執筆に時間がかかったり、何が言いたいかわからなくなったりする人は、まず「考える」ということに時間を多く費やすことが解決方法になるかもしれません。

親切すぎる文章力向上本

ノウハウが80も載っている時点で贅沢なのですが、巻末付録として

  • 表現・表記の基本ルール
  • 同音同訓異義語一覧
  • 言い換え表現一覧
  • 書き終えた後にすること

が収録されています。記号を文章に挿入する時の注意点や推敲の際のチェックポイントなど、知っておけば便利な情報が多く、あまり文章を書き慣れていない人にもためになる内容となっています。

もともとはブログを始める前に「恥ずかしい文章を書かないように」と思って買った本だったと思うのですが、なぜ積んであったのか。まさか運営開始一年経ってから読むことになろうとは思いませんでした。

ありきたりなタイトルに反して、その中身は濃い。文章作成に迷った時の、かゆいところに手が届く(決まり文句)ような本です。

SNSでもご購読できます。