風邪は世界最高の名医である/『風邪の効用』

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先週あたりに風邪をやらかしてしまい、一週間ほど寝込んだので、どうせならと勉強も兼ねて風邪についての本を読んでみた。初版は1962年なのでほぼ古典と言えますな。

風邪は自然の健康法である。風邪は治すべきものではない、経過するものであると主張する著者は、自然な経過を乱しさえしなければ、風邪をひいた後は、あたかも蛇が脱皮するように新鮮な体になると説く。本書は、「闘病」という言葉に象徴される現代の病気に対する考え方を一変させる。風邪を通して、人間の心や生き方を見つめた野口晴哉の名著。

上記のように、この本は風邪自体について書かれているというよりは、風邪についての考え方に重点を置いてある本だ。著者の言う「愉気法」などは知識の乏しい自分には理解しにくい部分もあったけれども、「自然の流れに任せて風邪を治す」という考え方はなかなかに新鮮であり、風邪をプラスに見ることを促してくれる。

「風邪なんて百害あって一利なし!早く治すに限る!」という考えを持っている人は、その観念が変わるきっかけとなる一冊かもしれない。

風邪は濁った体の掃除をしてくれる

風邪を引くと誰しもが「早く治す」ということを考える。風邪はやはり辛いものだし、生活にも支障をきたす。だから多くの人は風邪薬を飲んだり、食欲がなくても無理に何かを食べようとする。熱を出したら冷えピタを貼るかもしれないし、体が冷えると毒なのでお風呂を遠慮するかもしれない。

本書の中で著者はそういった「風邪を治そうとする行為」を否定する。著者によれば風邪というものは病気というよりは、それ自体がむしろ体の悪い部分を正す治療行為なのだという。だからその風邪に対してアレコレと手を加えるのはその治療を邪魔することであり、風邪の持つ素晴らしい効果を損ねることになってしまう。

それで私は風邪は病気というよりも、風邪自体が治療行為ではなかろうかと考えている。ただ風邪を完全に経過しないで治してしまうことばかり考えるから、ふだんの体の弱い処をそのまま残して、また風邪を引く。

風邪を引くということは、つまりは「体の偏り」が存在することのサインと言える。例えば連日のハードワークによって疲労が溜まったりすると、人は風邪を引くことがある。それはつまりは体が悲鳴をあげていて、休息の必要性を訴えているからだ。だから風邪を引いた時は、とにかく横になって休まなければいけない。

仮に風邪というものが存在しないとしたら、その人は死ぬまで働き続けてしまうかもしれない。痛みを感じるから危険から身を遠ざけることができるように、人間は風邪を引くからこそ早期に体の異常を検知できているわけだ。

風邪の時の入浴と食事

本書では風邪を引いたらできるだけ自然の流れに任せて「経過」させることが望ましいとされている。風邪を自然の経過に任せることにより、体は風邪を引く前より丈夫になる。悪いところがあったのなら以前よりも健康な状態になるし、またウイルスに対しての免疫もつく。

では自然に任せるとは具体的にどういうことなのか。本書ではそれについてもいくつか述べられている箇所がある。

例えば入浴に関して。風邪を引いた時に迷うことの代表といえば「お風呂に入ってもいいのか、悪いのか」ということだろう。本書の回答は「風邪の時こそ積極的に風呂に入るべし」となっている。

自分で考えて、入りたければ入り、嫌だったら止めたらいい。ただ、入浴というものの効果は、湯の温度で皮膚を刺戟して体のはたらきを亢(たか)め、体の内部の運動を多くする。また温まると汗がでるということである。そういう面からいえば、風邪を引いた時にこそ大いに風呂に入らねばならない。

子供の時に「風邪の時にお風呂に入っちゃ駄目よ」とお母さんに言われた人は納得しがたいかもしれない。僕もそのひとりだ。ただ最近だと風邪の時の入浴はむしろ推奨されている事実は確かにある。著者の言うように体の働きを高めるという点もそうだし、また浴槽の湿気は鼻や喉に優しいため、適度な入浴は風邪に良い影響を与えるそうだ。もちろん湯冷めや湯あたりに注意しなければいけないのは言うまでもない。

こうしてみると1962年に書かれた本書の内容が、現代でも正しい知識として通用していることになる。その点で本書の内容は現代に生きる僕達にも一見の価値があるように思う。

また食事についても書かれている。

風邪を引いた時に食物を少し減らすというのはごくよいことです。水分の多いものを食べ、刺戟性の食物を多くする。病気といえばすぐに刺戟性の食物を慎むべしと考えていますが、風邪を引いた時には刺戟性の多い物がよい。生姜でも唐辛子でも胡椒でも何でも構わない、胃袋が冷汗をかくくらい突っ込んでもいい。その方が経過を早くします。

風邪の時に食欲がなくなると、焦って無理にでも何かを食べようとしてしまう。しかし食欲が無いのであればそれは体が食べ物を必要としていないということなのだから、苦しい思いをしてまで食べなくてよいということだろう。

刺激物に関しては賛否がありそう。ただ生姜ドリンクは風邪の時には良いとされているのは有名だ。また唐辛子は胃を活発にし、かつビタミンCなどの栄養価も豊富なので案外わるくはないのかもしれない。

激辛料理とまではいかないなら、風邪の時に刺激物は確かにいいのかもしれない。このあたりは個人の判断となりそうだ。

風邪をプラスに考える

正直なことを言えば本書の中には鵜呑みにすると危険な内容も散見される。特に気功についての内容は現代の科学の前では完全に否定されてしまう可能性もあり得るように思う。

ただ本書の持つ大きな意味は、風邪を嫌なものではなく、体を健康に保つためのプラスの現象と考えることが可能になる点にある。「早く治すというのはよいのではない」「風邪自体が治療行為」といった著者の言葉の数々は、風邪を否定的に考えてきた人にとっては非常に励まされる言葉ではないだろうか。できれば僕も風邪を引く前に本書を読みたかった。

人間である以上、風邪は一生つきあっていかなければいけないものだろう。本書を読むことは風邪についての考え方を見つめなおす良い機会となるかもしれない。

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