仏教は意外とユルい宗教?『池上彰と考える、仏教って何ですか?』

明確に意識したことはないけど、あえて言うなら自分は「仏教徒」に属するのだと思う。ただそうは思いながらも、仏教について説明できるような知識は何もなく、それが少し情けなくもあり、恥ずかしくもあるように常々感じていました。

そんなモヤモヤを解消するために読んでみたのが以下の本。

著者の池上彰さん自身も日本に住んでいながら仏教についてよくわかっていないことが多く、「仏教とは何か」を疑問に感じていたそうです。そういった視点から書かれたこの本は、少し取っ付きにくそうな仏教を噛み砕いて解説されていて非常に読みやすい。

この一冊で仏教の大枠を掴めるという良書なのですが、今回は本書の中から「仏教のここらへんが面白い」と思う部分を中心にまとめてみたいと思います。

仏教は実は結構ユルイ宗教

宗教と聞くと厳しい決まりが多いように思いますが、それに反して本書を読み進めて抱くのは「仏教はユルい」というイメージ。

例えば世界三大宗教の中で、仏教だけは一神教ではありません。唯一絶対の神を崇めるキリスト教やイスラム教は時に別の宗教の考えを受け入れることができず、争いが生まれることがあります。しかし仏教は元を辿れば人間が生み出したものなので、そういったことは極端に少ないです。

世界三大宗教とひとまとめに呼びますが、仏教には大きな違いがあります。キリスト教とイスラム教はユダヤ教から生まれた、いわば兄弟のような宗教。どちらも唯一絶対の神を信じる一神教です。一方、仏教は、人知を超えた神や創造主といったものを想定していません。

また仏教はその時代によって様々な姿に変化をしてきました。大乗仏教はその最たる例です。厳しい修行を経ずとも、利他行為を続ければ悟りの道が開けると解いた大乗仏教は、言うならばかなり大衆向けの教えであり、多くの人に受け入れられました。また仏教の宗派である浄土宗は「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで極楽への道が開かれると説くなど、かなりハードルが低い教えです。

このように仏教は国の文化や、その土地の人々によって様々な変化を取ることを許容してきました。仏教には「諸行無常」という全てが一定ではないという教えがあるので、このような柔軟さを持つことができると著者は言います。

唯一絶対の神がすべてを定めている一神教とは違い、仏教の教えは人が生み出したものであり、不動のものではありません。そもそも無常が教えの根本なのですから、多様な解釈が生まれるのもまた仏教らしい姿といえるでしょう。

絶対的な決まりがあるわけではなく、ある程度は自分に都合のいいように捉えることも許してしまう。こういった良い意味でのユルさ・懐の深さが日本人に仏教が受け入れられている大きな要因となっているのでしょう。

救いを求める人に大きな決断を強いたり、苦行を勧めたりしないソフトな教えである仏教は、とくに今の日本人には受け入れやすいことでしょう。

科学が発展しても仏教は動じない

科学が発展することによって、少し都合が悪くなってしまったのがキリスト教です。

キリスト教圏であるアメリカでは聖書にある「全てを創造したのは神である」という考えが信じられています。そういった文化が基盤となっているので、人類の謎を次々と解き明かしたダーウィンによる「進化論」やホーキング博士による「宇宙論」は大きな反発を受けることとなりました。そういった説が生まれることは、同時に神を否定することにもなるからですね。

歴史的には、キリスト教圏で科学が発展したのは、世界を創造した神の偉大さを証明するためです。しかし、発展の先に行き着いたのが、聖書と相容れない進化論であり、ホーキング博士の宇宙論でした。宇宙や世界のことがわかればわかるほど、キリスト教にとって不都合が生じてしまうのです。

それに対して仏教はそれ自体が人間によって生み出されたものであり、そういった科学の発展にも揺らぐことはありません。その中心にあるのは人間であり、大切なのはどのように生きるかなので、外部の環境はあまり関係ないのです。

柔軟さがあることも特徴ですが、このような普遍的な部分を備えているのも仏教の大きな魅力なのかもしれません。

日本文化を知るための仏教

この本を読むと、仏教はもちろん宗教には違いないのですが、哲学的な意味合いも強いように思いました。人間の生き方に根ざしたその教えは非常にわかりやすく、受け入れやすい。

日本人はなぜ無宗教なのか』を読んだ時にも思いましたが、宗教を知ることは、同時に歴史を知ることにもなります。世界の歴史は、その土地の宗教が深く関わっていることが多いです。それは日本でも同様で、仏教について知っておくことは日本の文化を深く理解することにも繋がるように思います。

仏教を知ることは、己を知ること。そして、日本を知ることです。

日本に住んでいるなら、仏教とは切っても切り離せない関係にあります。それならば概要だけでもいいので、その内容に触れておく意義は十分にあると思います。非常にわかりやすい本なのでおすすめです。

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