最良の仏教入門書『ブッダが説いたこと』

日本に住んでいれば、一度は仏教について詳しく知りたくなる人は多いと思う。ただそういったときに、その教義をわかりやすく理解できるコレといった本は多くない。その中で、今回取り上げる『ブッダが説いたこと』は非常に参考になる良書と言える。

表紙の雰囲気や岩波文庫ということからお硬い内容を想像してしまうけれど、文章は自分のような素人でもスイスイ読めるほど簡明で、教義に関しても基本的な部分のみを取り上げているので理解がしやすい。また単なる経典の抜き書きではなく、仏教修行者である著者の概説という形式なので「仏教をどのように考えればいいか」という方向性も掴める。

仏教の中心はあくまで人間

本の中で印象深かったのは「人は誰でもブッダになれる可能性を秘めている」という箇所だ。勘違いしそうになるけれど、ブッダは唯一絶対の神というわけではない。確かに偉大な存在ではあるが、彼はすべてのモノを「人間の努力と知性」によって得た。つまり人間である時点で、ブッダのように悟りを開く素質は持っているということになるのだ。

人間は誰でも、決意と努力次第でブッダになる可能性を秘めている。

これは唯一神を崇める宗教だったらあり得ないことだろう。「自分が神になる!」なんてどっかの漫画の主人公みたいなことを言い出したら、罰当たりなことを言う馬鹿としか思われないに違いない。このことは宗教の中でも仏教が特殊な位置を占めている大きな理由だろう。仏教は人間による、人間のための宗教なのである。

だから仏教には信仰という概念は必要ない。仏教の中で強調されるのは「見ること」そして「知ること」だ。自分を取り巻く世界や自分自身を、正しく見知らないといけない。信仰はときにそれらを邪魔してしまう。「盲信」と呼ばれるものだ。いつの時代でもそうだけれども、権威があるから言っていることが全て正しいというわけではない。大切なのは自分でモノゴトを正しいかどうか見通すことだ。ブッダは信仰によってモノゴトを盲信する人が生まれる危険性を理解していたのだろう。

ほとんどすべての宗教は、信仰――それもむしろ盲信といえるもの――に立脚している。しかし仏教で強調されているのは、「見ること」、知ること、理解することであり、信心あるいは信仰ではない。

ここまで見てきたように、仏教は常に人間を中心としている。神々を崇める他の宗教が悪いという話ではないけれど、この超人間主義とも呼べる教義が、仏教を世界的な宗教として広げることとなった最大の理由と言える。仏教はときに哲学的に思える部分もあるが、人間の本質を追求する哲学との共通点が見いだされるのは当然かもしれない。

最良の仏教入門書

巻末の解説にも述べられているように、この本は「最良の仏教入門書」と呼んでもいいぐらいにわかりやすい本だ。四聖諦や八正道という難しそうな教えについても砕いて書かれている。ただわかりやすいからと言って、一度で完全に理解できるというわけでもない。繰り返し読んで自分に浸透させていくことも必要となりそうだ。

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