「変化」を楽しもう——『チーズはどこへ消えた?』

『チーズはどこへ消えた?』は1998年に刊行されてから全世界で2400万部を記録したベストセラーである。個人的にはあまり興味のない本だったのだが、2019年になって続編にあたる『迷路の外には何がある?』が刊行されたということで読んでみることにした。

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「変化」に対してどう向きあうか

あらすじとしては、二匹のネズミと二人の小人のそれぞれが迷路でチーズを探すというお話。これだけだとまったく面白くはなさそうだが、この作品における「チーズ」は我々にとっての大切な何かの象徴となっていることに特徴がある。チーズに対する登場人物それぞれの行動から読者は学びを得ることができる仕組みとなっている。

それまで食料としていたチーズが消えてしまうという「変化」に直面したとき、ネズミのスニフはあらかじめそれを予見していたため動じることはなく、もう一匹であるスカリーはすぐに行動を起こした。それに対して小人のホーは初めこそ絶望したものの、ネズミにはない思考力を働かせて状況を打開した。一方でもうひとりであるヘムは状況を受け止めたくないあまりに殻に閉じこもってしまった。それぞれ別々の行動を取った登場人物たちから我々は何を感じ取ればいいのだろうか。

登場人物の誰から学ぶべきか

まず登場人物のなかでもっとも最善の選択をしたのはネズミのスニフとスカリーである。変化の前兆を感じ取り、それに動じることなく正しい行動を起こした。そのため読者はこの二匹を見習うべきかといえば、個人的にはそうではないように思う。なぜなら私たちは思考をする人間だからだ。思考するがゆえに人間なのであって、ネズミの純粋かつ愚直な方法など決して模倣できない。人間であるからには思考を用いて変化に対応していかなければならないのである。この作品が小人のホーの行動を追体験する形式となっているのも、やはり人間は人間のやり方から学ぶべきだからなのだろう。

ホーは最終的に「変化」から目をそらすのではなく、それに対する自身の考え方を変えることによって新たなチーズを手にした。つまり前述のとおり、基本的に読者は彼の歩む道から学びを得るべきである。しかしそうとは理解していても、個人的にはヘムに感情移入する部分が多かった。ホーとは対照的にヘムは変化することを恐怖し、未来に根拠のない希望を抱いている。時が過ぎれば自然と状況が良い方向へ向かうと信じているのである。自分も一時期同じようなことを考えながら殻に閉じこもっていた時期があったのでヘムの気持ちが痛いほど理解できてしまった。ちなみに続編である『迷路の外には何がある?』の主人公はまさにこのヘムということなので、個人的には読むのが非常に楽しみになっている。

おわりに

この作品は寓話という形式を取っているため一気に読めてしまうが、その読みやすさゆえに一度では完全に身に入りにくい。自分も一時間も経たないうちに読破できてしまったが、一度目は結局何が言いたいのかを正確に理解できなかったように思う。何度か読んで徐々に浸透させていくべき本だろう。

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