池上彰に学ぶ「伝わる」書き方──『伝える力』

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「伝える」という事に関しては池上彰さんほどのプロフェッショナルはそうはいない。難しいニュースをわかりやすく丁寧に話すことは最早この人の専売特許になっているし、また文章もとにかく読みやすい。

そんな彼が2007年に著した『伝える力』は今でも多くの人に読まれているベストセラー本だ。もともとは雑誌のインタビューだったはずが、ある「陰謀」によって書籍化することになったという裏話が面白い。

「話す・聞く・書く」という3つの能力を高める方法について書かれた本だけれど、今回はこのブログのテーマのひとつにもなっている「書く」という部分に焦点を当てていこうと思う。

便利な言葉に逃げない

文章には、使うだけでそれっぽく見える便利な言葉がある。

例えば「カタカナ語」はそのひとつだ。最近だとLIGの岩上貴洋社長の代表あいさつがカオスすぎて話題になっていたけど、あれはカタカナ語を多用したがるビジネスパーソンへの皮肉なのだろう。互いに意味を理解できれば良いかもしれないが、理解できない時はとにかくイラつくのがカタカナ語と言える。

また「〜的」「〜性」という言葉も便利な言葉だと著者は言う。

たとえば「利便性」という言葉があります。

当社のこの新製品は、従来の製品よりも利便性が格段に高まっています。貴社の業務は、この新製品によって、さらに改善されると確信します。

と言われても、その「利便性」とは何なのか、まるでわかりません。

こういった言葉を使うことの問題はどこにあるかと言うと、意味が大雑把すぎて具体性に欠けることにある。「利便性」にしても、もう少し踏み込んで「どこが便利なのか」ということを教えてあげないと読み手には真の意味で伝わらない。また便利な言葉を使うことに慣れてしまえば、思考はそこでストップしてしまう。そういった言葉を使わずに別の表現を心がけることが自分の意図を正確に伝えるトレーニングとなるというわけだ。

便利な言葉を使っていると、使う人が思考停止になってしまう恐れがあることを、知っておきましょう。 「~的」「~性」という言葉の多く、あるいはいくつかはこうした性質を持っています。

接続詞を使わずに論理的に書いてみる

池上彰さんは文章力を高めようとした時に、接続詞を使わないことを自らに課したらしい。特に「そして・それから」の類はなるべく避けるようにしたとか。

接続詞は文章の流れを明確にする大切な役割を持っているが、多用するとマヌケな印象を与えてしまう。

朝起きたら、天気がよかったです。ねむかったけれども、がまんしてふとんから出ました。    そして、手と顔をあらいました。そして、きがえをしました。    それから、おかあさんが作ってくれたごはんを食べました。おかずは、みそしると目玉焼きとつけ物でした。とてもおいしかったです。

小学生の読書感想文なら許されるレベルかもしれないが、これに近い文章を書く大人を時々見かけるのが恐ろしいところ。著者は「構造が正しければ接続詞は無くても論理的な文章になる」と述べている。もちろん接続詞を使わずに書くということは難しい。ただ先ほどの「便利な言葉」と同様に、難しさから逃げてしまうと文章の成長はそこで止まってしまう。どうしても接続詞を使わなければいけない場面はあるだろうけど、心掛けとして意識しておくことが大切になるということだ。

むしろ、「接続詞を使わないで文章を書こう」と決意しますと、接続詞がなくても論旨が通るように文章の論理を研ぎ澄まさなければなりません。この努力を続けていくと、論理的で読みやすい文章が書けるようになるのです。

まとめ

この本は200ページぐらいの本で、また文章も非常に歯切れがよいので2時間ほどで一気に読み終えることができる。ただ内容は多岐にわたり、誰しもが栄養にできる部分を持った本だと思う。個人的には今回取り上げた「書く」についての章が響いたが、他の人にとっては「聞く」や「話す」についての箇所かもしれない。気軽に手にとって読んで欲しい一冊。

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